本研究ではSMA(形状記憶合金)繊維を用いて、CFRP製圧力容器の耐圧強度の向上と容器の簡便な損傷同定手法を確立することを目的に平成13年度と14年度の2年間行われたが、以下に研究成果の概要を示す。 1.SMA繊維による耐圧強度の向上を確認するため、まずアルミ中空円筒の内圧試験を行い、0.3%の圧縮ひずみ与えたSMA繊維をアルミ中空円筒の周方向に巻いた場合の破断ひずみは、巻かない場合に比べて66%増加し、耐圧強度の向上を確認した。 2.CFRP円筒を成形し、SMA繊維をCFRP円筒に巻き付けてその耐圧強度を求めたが、この場合も巻き付けない場合に比べて耐圧強度が上昇する。しかし、等方性アルミ中空円筒の場合と違って、CFRP製の円筒の耐圧強度と破壊モードは円筒成形時のCFRP材の配向角、SMA材の巻き角度の関数となり、最適なCFRP配向角とSMA繊維の巻き角度を明らかにする必要性を示した。 3.SMA繊維を巻いたCFRP製圧力容器を逆変態温度以上に加熱して行った耐圧実験結果、SMAに記憶させた圧縮ひずみを利用した容器のひずみデータは、CFRP製圧力容器単体、SMA繊維を巻いただけの圧力容器(逆変態温度以下で実験)のひずみデータよりも小さくなり、SMA繊維によるタガ締め効果が確認できた。 4.素線径1.0mmの方が素線径0.5mmよりタガ締め効果が大きい。さらに、素線径1.0mmのSMA繊維を巻いたCFRP製圧力容器(逆変態温度以上)の破裂圧力は圧力容器単体の値に比べて25.5%向上し、本研究の主要な目由が達成できた。 5.SMA繊維によるCFRP製圧力容器の耐圧強度の向上を解析的に明らかにするために、CFRP圧力容器をSHELL要素、SMA繊維はBEAM要素を用い、SMA繊維の記憶した圧縮ひずみを線膨張係数と負の温度でモデル化したFEM解析は実験結果と良い一致を得た。このFEMを用いて、CFRPとSEMの両巻き角度をパラメータとした最適設計の角度を得ることで圧力容器の耐圧強度を一層向上させることができる。またこのFEMはCFRP製圧力容器内部の損傷を同定する簡便な手法の確立にも貢献する。 本研究の成果は、韓国複合材料学会に2002年度春季講演会での招待講演、日本材料学会や日本機械学会の講演会で発表さら、内外に広く公表された。
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