研究概要 |
これまで酸応力環境下におけるGFRPのき裂進展挙動および下限界特性の解明に取り組んできた.その結果,Cガラス系FRPは,Eガラス系に比べ,耐食性に優れることが確認された.Eガラス系は酸拡散によるガラス繊維腐食により,Cガラス系は水拡散による繊維荷重分担率の増加もしくは界面強度の低下によりき裂進展に影響を与えることが示唆された.そこで巨視的視点からの考察を行ってきた従来の積層板に加え,モデル試験を導入することにより,微視的視点からの内部強度劣化,界面劣化を考慮した耐食性FRPのき裂進展機構解明を試みた. これまでの単繊維モデル試験により界面劣化は水拡散の影響が支配的であることが示されてきたが,フラグメンテーション試験において界面はく離,樹脂部降伏が観察されたことから,これらを考慮するために界面はく離エネルギによる評価を行った.この結果,浸漬直後において界面劣化が生じ,一定時間経過後は界面はく離エネルギが一定値に収束することが示された.また,浸漬させた後,乾燥させることで界面はく離エネルギの回復が見られ,界面接着の可逆性が確認された. 一方向材を用いて水拡散により生じる下限界応力拡大係数近傍でのき裂進展挙動の変化を調査した.き裂進展に対し90°方向繊維について架橋現象が観察され,界面劣化により架橋によるき裂進展を抑制する効果は大きくなることが示唆された.これは界面はく離が発生しやすいほど繊維の破断が抑制される傾向にあるためと考えられる.0°方向繊維についても架橋現象が確認されたことから,この方向の繊維も織物積層板中においてき裂進展抑制に寄与すると考えられる.また,破面観察より水拡散の影響を受けた界面劣化により繊維/樹脂界面に沿った先行き裂進展が確認された.以上より,耐食性FRPにおいては水拡散によりき裂進展形態の変化が予測され,この影響の重要性が示唆された.
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