本研究においては形状記憶材料の長期間使用による機能特性変化の研究として、主に形状記憶合金の繰り返し機能特性、形状記憶ポリマーの繰り返し機能特性の研究、形状記憶合金の疲労特性、形状記憶ポリマーの長期間形状固定した後の変形特性について調査および検討を行った。これらの研究により得られた主な研究成果は以下に示す通りである。 (1)形状記憶合金の応力制御のサブループ負荷について、負荷過程でひずみを一定に保つと応力緩和が生じ、応力を一定に保つとクリープ変形が現れる。同様に除荷過程において応力回復とクリープ回復が現れる。これらの挙動は温度変化に伴うマルテンサイト変態により生じ、繰返し初期に大きく現れる。 (2)形状記憶合金線材の両振り平面曲げ疲労試験機を新たに開発した。TiNi形状記憶合金線材の回転曲げ、片振り平面曲げおよび両振り平面曲げの疲労試験結果から、最大ひずみで整理するとひずみ比の疲労寿命に対する影響を統一的に表すことが出来ることを明らかにした。新たに開発された超弾性薄肉細管の疲労寿命は、超弾性中実細線の疲労寿命に比べて短い。薄肉細管での疲労亀裂は内表面から発生し、疲労破面率は小さい。 (3)新たに開発されたNiTi高弾性細線に関して、変形特性は1400MPaの応力で4%のひずみまでほぼ比例関係にあり、疲労特性は温度および繰返し速度に依存しない。また、弾性係数はステンレス鋼細線の弾性係数の約1/4である。したがって、NiTi高弾性細線は医療用ガイドワイヤーの操作性能に優れている。 (4)形状記憶ポリマーフォームを高温で負荷し、低温で形状を固定する場合には、最大ひずみに関係なく6ヶ月経過しても形状固定率および形状回復率は共に98%以上である。 (5)形状記憶ポリマーフォームを高温で形状保持する場合には、二次賦形現象が現れ、形状が完全には回復しなくなる。二次賦形率(形状非回復率)は形状保持温度、形状保持ひずみおよび形状保持時間に比例して大きくなる。
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