研究概要 |
電子デバイスに使用されるはんだのクリープ強度の研究は,最近になって系統的に行われつつあるが,それらの研究の殆んどが,標点部直径7mm〜10mm程度の比較的大きな寸法の試験片を用いている.しかし,実際の電子デバイスに使用されるはんだ接合部の寸法は数100μmのものが多く,バルク試験片から得られたデータの微小なはんだ接合部のクリープ強度への適用性が課題とされてきた.本研究では新たに開発したミニチュアクリープ試験装置を用いてはんだのクリープ試験を行い,はんだのクリープ強度に及ぼす試験片寸法の影響を解明した.直径0.3mm〜2mmの試験片用のミニチュアクリープ試験装置を用いて,温度313Kで鉛系Sn-37Pbはんだを供試材としてミニチュアクリープ試験片によるクリープ実験を実施した.その結果を標準サイズの試験片での実験データと対比することにより,クリープ破断時間に及ぼす試験片サイズの影響について検討した結果,以下のことが判明した. 1.高応力側においては,クリープ破断時間は試験片の直径に関わらず大きな差はなかった.しかし,応力が低下するに従い,ミニチュア試験片の破断時間はバルク試験片の長寿命側および短寿命側にばらつきを示した.しかし,実験を行った範囲では,このばらつき幅は,バルク試験片の破断時間に対して,ほぼ係数2の範囲であった. 2.ミニチュアクリープ試験片のひずみ速度は,バルク試験片のそれに対して,小さかった.また,試験片の直径の減少に伴い,破断延性は減少する傾向にあった. 3.バルク試験片の破面にはディンプルが多数観察された.直径2mmおよび1mmの試験片の破面にも,バルク試験片と比べて数は少ないがディンプルが観察された.しかし,直径0.5mmの試験片ではへき開状の破面が観察された.
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