本研究は、ナノテクノロジを支援するため、ナノメートル以下の精度をもちかつメートル定義に直結する測長法の開発を目指すものである。結晶格子表面の格子間隔とレーザ干渉計の波長をそれぞれ微調・粗調基準とする測長法である。以下の研究成果を得た。 (1)超精密・超安定レーザ干渉計制御システムの開発 光路差が波長の整数倍をピコメートル分解能で決定できる位相変調ホモダイン光路差増倍差動型レーザ干渉計を試作開発した。またこのレーザ干渉計の情報を基に、試料台(ステージ)の変位を制御するシステムを高速DSPと高精度AD/DA変換器を用いて開発した。 (2)超精密直動ステージと高安定走査型トンネル顕微鏡の開発 直動性、剛性(共振周波数)、走査範囲がそれぞれ、0.2秒以下、2kHz以上、10μm以上となる超精密直動ステージとこれを試料台とする高安定な走査型トンネル顕微鏡(STM)を開発した。この両者の組み合わせで、外乱(振動と音響)の比較的多い環境下でも、高配向焼結グラファイト(HOPG)結晶格子表面の原子像を容易に観察することが出来た。 (3)グラファイト結晶格子表面の格子間隔測定 (1)(2)で開発した機器を組み合わせ、グラファイト結晶格子表面の格子間隔の精密測定を試みた。測定不確かさをピコメートル以下として、格子間隔約0.25ナノメートルを測定可能とすることが出来た。さらなる不確かさ低減のための問題点を抽出することが出来た。 (4)複合型絶対測長機の試作 位相変調ホモダイン光路差増倍差動型レーザ干渉計、デュアルステージ、高安定STM/AFMヘッド、恒温真空セルを複合した小型絶対測長機を試作した。 以上の結果より、結晶格子とレーザ干渉計を複合した絶対測長法の基本要素技術を開発した。
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