研究概要 |
ボールねじ送り系のテーブルにアクチュエータを付加したデュアルアクチュエーション送り系を用いた高速・高精度送り制御の研究を行った.特にボールねじ送り系の2慣性系振動問題についてシングルアクチュエーションとの比較を体系的に行い,アクチュエータの出力限界を考慮した制御系設計法も考案し,これを実験で検証した. デュアルアクチュエーション送り系のテーブル側アクチュエータとしてはリニアモータと油圧ブレーキによる可変しゅう動抵抗ガイド(インテリジェントガイド)を使用し実験を行った.得られた成果を以下にまとめる. (1)回転モータ,テーブル各々の直接速度フィードバックでは振動減衰は独立には制御できない.これに対し,回転モータとテーブルの相対速度をモータトルク,テーブル直動力の両方,またはいずれかにフィードバックする場合は,振動極を独立に制御できる. (2)テーブル側への速度フィードバック効果により回転モータ側伝達関数の零点が制御できる. (3)相対速度をフィードバックする場合,減衰比は相対速度ゲインと慣性比によって決定される.相対速度をモータトルクとテーブル直動力の両方にフィードバックするデュアルアクチュエーションでは,慣性比の広い範囲で高い減衰効果が得られる. (4)相対速度をテーブル側にフィードバックする方法は低域のしゅう動抵抗を増加しないので,主送り系のモータに余分な負担をかけない. (5)アクチュエータ出力の飽和がある場合でも,非線形フィードバックにより,さらによい制振性能が得られる. (1)〜(3)の結論は,送り系のハイゲイン化すなわち高応答化と低振動化を両立することに寄与するので,送り系の高速・高精度化に重要な知見である.(3)〜(5)の結論はシステム設計を効率的かつ低コストかつコンパクトに行うときに寄与する応用上重要な知見である.
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