超純水のみによる電気化学的加工現象の、第一原理分子動力学シミュレーションを行った。密度汎関数理論に基づき、擬ポテンシャル法、平面波展開法を用いて電子状態を計算し、各原子に働く力を求めた後、運動方程式に従って各原子を移動させることにより最安定原子配置を求めた。今回は、Si(001)表面の反応について検討した。超純水のみによる電気化学的加工法では、触媒材料を用いて超純水中の水分子を分解し、生成されたOH^-イオンが陽極である被加工物表面に到達した後、電子を陽極表面に渡し、中性OHが生成される。そこで、原子数40個から成るSi(001)表面モデルを用いて、Si表面原子に中性OHを1個から5個まで反応させたが、Si表面原子が加工されることはなく、OH同士の反応によって生成された酸素原子によるSi表面の酸化反応が進行した。次に被加工物であるSiを陰極とした場合の表面反応について検討した。陰極表面にはH^+イオンが供給されるが、H^+イオンは陰極表面から電子を受け取り、中性Hとなる。従って、Si表面原子は水素終端化されるものと考えられる。そこで、水素終端化Si(001)表面上の水分子に中性Hを供給したところ、水素分子とOHが生成し、OHは水素終端化Si(001)表面原子と反応して、表面原子の2本のバックボンドのうち、1本を切断した。次に、バックボンドの切断によって生成されたSi第2層原子のダングリングボンドを水素によって終端し、さらにもう1個のOHをSi表面原子に供給すると、残りの1本のバックボンドも切断され、Si(001)表面原子は、SiH_2(OH)_2分子となって加工された。以上のシミュレーションにより、Siは陽極としては加工できないが、陰極とすることによって加工が可能であることが予測できた。
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