超純水のみによる電気化学的加工法は、超純水中の水分子を触媒反応によって解離し、生成されたOH^-イオンと加工物表面との化学反応によって加工を行うものであり、電解液による加工物表面の汚染がなく、加工後の洗浄プロセスが不要で、かつ廃液を排出しない超清浄・超精密加工プロセスである。現在、種々の金属材料を実用速度で加工することが可能となっているが、SiやAlなど一部の材料については、表面酸化膜が形成され加工できないことがわかっており、本加工法の応用範囲を拡大するうえでの問題となっていた。また、このような、材料の種類に依存する加工特性の違いがどのような理由によるものかも十分には明らかになっていない。そこで、本研究では、第一原理分子動力学シミュレーションを用いて、加工できない材料であるSiやAl表面の反応素過程の解明を試みた。密度汎関数理論に基づき、擬ポテンシャル法、平面波展開法を用いて電子状態を計算し、各原子に働く力を求めた後、運動方程式に従って各原子を移動させることにより最安定原子配置を求めた。その結果、SiやAlの加工物を陽極としてOHを作用させるだけでは、OH同士の反応によって酸素原子が生成され、酸化反応が進行した。しかし、加工物を陰極とした場合には、供給されるH原子と水分子との反応によってOHが生成され、これが水素終端化された加工物表面原子に作用することによって除去加工が進行することが明らかになった。同時に実証実験も行い、SiやAlを陰極とすることによって加工することが可能であることがわかった。本研究成果により、あらゆる(導電性の)材料を超純水のみで加工することが可能になり、本加工法の応用範囲を拡大することができた。
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