研究概要 |
繊維強化熱可塑性プラスチックは耐衝撃性に優れ,リサイクルが容易であるため,幅広い分野で,使用が増大しているが,成形コストが高く,コスト低減への要求が高まっている.そこで低コストで実用的な成形方法の確立が必要不可欠である.最近開発されたコミングルドヤーンクロスという成形材料は、一本の繊維束の中にガラス繊維とポリプロピレン繊維を混合して紡糸したヤーンをクロスに織ったものである。ガラス繊維に対する樹脂の含浸がよく、成形加工の効率化が期待できる。そこで本研究ではコミングルドヤーンクロスを用いて,ポンチ径40mmにおける円筒深絞りを行い,各成形条件が成形性に及ぼす影響を,成形品の表面状態の観察によって比較した.得られた主な結果を以下に示す. 1.平行ブランクでは,ブランク温度180,200,220℃,金型温度90℃において,絞り深さD=40mmですべてのポンチ肩半径Rで絞りが成功した.R=20,15mmのとき,D=50,60mmでは繊維の表面露出,D=70mmでは繊維の破断が生じ,R=10,5mmのとき,D=50mmでは繊維の表面露出,D=60,70mmでは繊維の破断が生じた. 2.交差ブランクでは,ポンチ肩半径R=5,20mm,ブランク温度180,200,220℃,金型温度90℃において絞り深さD=40mmでは絞りが成功し,D=50,60,70mmでは繊維の表面露出が見られた. 3.金型温度が90℃のとき,ブランク温度,しわ押さえ力を変えても成形性にほとんど影響は見られなかった.また,金型温度が75℃以下のとき,ブランク温度が低いほど,樹脂が硬化するまでの時間が早くなるために,繊維破断が見られ,成形品の表面状態が悪化した. 4.ブランク内の繊維は,絞りに伴う円周方向圧縮力のためフランジ部で回転を起こしながらダイス内に流入する.その結果,繊維は成形品側壁部でポンチ軸方向に向かって配向する.絞り深さが深くなると,側壁部ダイ肩近辺においては,ほとんどの繊維がポンチ軸方向に平行に配向した.
|