研究概要 |
本年度は,シミュレーションモデル構築のための基礎データを得ることを主な目的として研究を進めた.先ず,微小運動領域におけるすべり案内面の変位-摩擦負荷特性を調べるための実験装置として使用する,超精密位置決め機構の位置決め分解能の高分解能化を行った.既存システムの位置決め分解能1nmをサブナノメータに改善するため,当該位置決め機構を,光学ピッチ0.1379μmのレーザースケールと500および4096分割のディテクタに,PC上で動作する高性能数値制御ボードを組み合わせたシステムに改造した.その結果,500分割ディテクタ使用時に1ステップが約0.28nmのステップ送りを実現した.また,位置決め指令に基づく停止位置におけるスライダのフラクチュエーションが,リニアスケールの分解能である±0.28nm以内に制御可能となった.この実験から,アクチュエータとして用いた力操作型油圧アクチュエータに供給する油圧圧力の高い周波数領域での変動が,位置決め分解能に大きな影響を与えることが明らかとなった.この実験結果は,高い周波数成分を含む外部負荷の下で動作する超精密位置決め機構においては,系内の減衰機能の確保が極めて重要で,超精密位置決めにおけるすべり案内の有効性を実証するものである.位置決め機構の高分解能化によって,すべり案内面の運動方向の反転を含む微小運動領域における変位-摩擦負荷特性がより詳細に観察可能となった.現在,得られたデータの解析を進めている. 上記基礎データの収集と同時に,これまでの研究成果を基にすべり案内を用いた位置決め機構の運動挙動のシミュレーションを行い,運動反転時の微小運動領域における変位-摩擦負荷特性が超精密位置決め制御に重要な要因であることを明らかとした.
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