研究概要 |
平成14年度は、昨年度の基礎データを基にシミュレーションモデルを構築した。すべり案内面の変位-摩擦負荷特性は、従来のモデルのように運動の反転と同時に、新たな運動方向に対応した方向と反転後の運動速度に対応したある大きさをもつ摩擦負荷に直ちに変わるのではなく、過渡領域が存在する。運動反転の直後の摩擦負荷は運動方向と同じ方向、すなわち反転前の摩擦負荷と同じ方向を維持し、反転後の運動変位がある値に達するとその方向は運動方向と逆となって運動の抵抗力として作用するようになる。すなわち、反転直後の摩擦負荷は運動を加速する方向に作用し、その後運動の抵抗力として作用するようになる。この間、摩擦負荷は運動変位の増加に伴って、反転前の定常状態での方向,大きさから反転後の定常状態における方向,大きさまで連続的に変化する.過渡領域で運動が反転すると,摩擦負荷はこの変位-摩擦負荷特性の曲線上を逆にたどって変化する.この特性は同一の運動条件の下では極めて再現性が高いことも明かとなった.この過渡状態は反転後の運動変位が数100μmと微小で,従来のシミュレーションモデルでは無視されていたが.ナノメートルレベルの超精密位置決めにおいては,位置決め分解能および位置決め精度に大きな影響を与える.本年度この変位-摩擦負荷特性の非線形特性,履歴特性を,制御系の解析に多く用いられている汎用ソフトウェア(MATLAB)をもちいて位置決め制御系の解析モデルに組み込む手法を開発した.解析モデルに基づいて,運動負荷180kg,分解能0.28μmのリニアスケールをフィードバックセンサーとする位置決め制御系を構築して実験を行い,モデルの有効性を検証しこれを確認した.この研究成果は,ナノメータレベルの超精密位置決め制御系の設計を,すべり案内面の変位一摩擦負荷特性を含む新しいシミュレーションモデルを用いることによって,より確実に行うことを可能にした.
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