研究概要 |
1.切削速度が切れ刃に沿って変化するドリル切削を扱うため,チャンファ(第1すくい面)の他に第2すくい面と切りくずとの接触長さを拘束するランド部をもつ工具の傾斜切削模型を拡張し,切りくずの横向きカールを表現できる切削模型を開発した.長ピッチ形の切りくず生成状態に対応する解析結果は,第2すくい面投影長さによって切削トルクに極小値が存在する実験結果を説明することができた.しかしながら,切れ刃に沿う直角すくい角の変化を含めて取り扱うまでには至っておらず,これを考慮できる切削模型の開発が必要である. 2.ステンレス鋼SUS304を被削材として,平削り盤で瞬間停止装置を用い2次元および傾斜切削実験を行った.デッドメタルの形状に関しては6:4黄銅を被削材とした場合と大きな違いは見られなかったが,切りくずと第2すくい面とが接触する場合,切削加工前の工作物表面の加工状態によって切りくず生成状態は大きく変化することが分かった. 3.高速度工具鋼ドリルのチャンファ部のすくい角やすくい面長さを変化させ,工具寿命に及ぼす影響を検討した.SUS304の切削には,送りの1.3倍程度のすくい面投影長さで3面のすくい面からなるドリル形状が有効であり,チャンファ部に関しては,すくい角は-15〜-30°,すくい面投影長さは送りの0.3〜0.7倍のときに長寿命となる結果が得られた.短寿命のドリルの損耗形態は,主切れ刃内周部の欠損とマージン部の摩耗によるものに分かれた. 4.マージン部に相当する部分を考慮した3次元切削模型を用い有限要素法による切削温度計算を試みた結果,上記損耗個所に対応する主切れ刃内周部と外周部で高温度域が出現した.
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