研究概要 |
1.大きな負のすくい角の工具を対象として,工具-切りくず接触長さが人為的に拘束された接触面積拘束工具の切削状態から,それが自然接触長さまで伸びて通常工具による切削状態へと移行する状況を表現できる切削模型を開発した.工具-切りくず接触長さが大で,切削油剤を十分に供給してすくい面の摩擦状態を緩和した場合においても,デッドメタルは消滅しないことが実験で確認され,理論との一致をみた. 2.チャンファ(第1すくい面)の他に第2すくい面と切りくずとの接触長さを拘束するランド部をもつ工具による2次元切削模型に,切りくずの並進速度成分を考慮して,切れ刃傾斜角による切りくず流出角と切削抵抗3分力の変化を説明しうる傾斜切削模型を開発した.瞬間停止装置を用いた傾斜切削実験で,切りくずが第1,第2すくい面と接触して生成される場合,デッドメタルは切れ刃傾斜角が50°程度までは残留し,さらに大となった70°に達してやっと消滅する傾向を見せた. 3.平面すくい面のドリルを対象として,マージン部に相当する部分を考慮した3次元切削模型とエネルギー解法に基づいて得られる諸データを用い,有限要素法による切削温度計算を試みた.長ピッチ形切りくず生成状態では,主切れ刃内周部とマージン部に対応する外周部に高温度域が出現した 4.チャンファ部のすくい角とすくい面長さ,第2すくい面長さを変化させ,ドリルの工具寿命を調べた.チャンファ部のすくい角が-15〜-30°,チャンファ部のすくい面投影長さが送りの0.3〜0.7倍(高速度工具鋼の場合),0.15〜0.3倍(超硬合金の場合),そして全すくい面投影長さが送りの1.4倍程度で3面のすくい面からなるドリル形状が,SUS304の切削には有効であることが実験によって見出された.
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