薄板ばね鋼板(0.1mm)からパイプを製造することは不可能であるとされていた。この理由はばね材のスプリングバックを抑えることができないということによるが、研究代表者(小奈)はスプリングバックを逆に利用することによってパイプを製造する方法を開発した。この方法は、たとえば、ベンダーでばね材を板端から小さな曲げ半径に90°曲げをした後に、材料をベンダーから外し、少し前送りしてから再び90°曲げをする。この操作では前に90°曲げした部分はベンダーのホルダーに当たり平らになるが、除荷すると板はスプリングバックによって再び丸みを帯びる。この操作を繰り返すと板はパイプ状になる。 ベンダーでは曲げを行う度に、板を抑える→曲げる→板押さえを緩める→材料を送る→板を抑える→・・・を繰り返すが、これを連続的に行うにはロール幅間隔を徐々に狭めたタンデムロールに通せば上記のベンダーと同じ結果が得られる。この方法によって成形されたパイプは平らな板にすることも可能である。また、平板にされた帯板は、コイルから巻き戻すと再びパイプの形状に復元する。この巻き・巻き戻しが可能なパイプはロケットで大量の輸送が可能であるので、宇宙ステーションの建設材料として使用することが見込まれる。平成13年度は9段のタンデムロールの成形を1段成形で行うことの見とおしが得られた。これは宇宙現場でパイプの製造を可能にするには製造機械のロケット輸送上、機械の軽量化が必要不可欠であるが、これを可能にする道が開けた。今後は1段成形機械の製造の安定化、遠隔操作について追及する。
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