薄板ばね鋼(0.1mm)を曲げてパイプを製造するということは困難であるとされていた。この理由は薄板ばね材は低延性材であり、しかもスプリングバックを抑えることができないということによるが、研究申請者はこのスプリングバックを利用することによってパイプを成形する方法を開発した。この方法は薄板ばね材をタンジェントベンダーで90°曲げした後に、ばね材を少し前送りして再び90°曲げをするという操作を繰り返したところ、ばね材はパイプ状に曲がることを発見した。 タンジェントベンダーでの曲げは板の固定→曲げ→板押さえの緩め→少量前進→固定→・・の操作を繰り返すため非常に非生産的である。これを連続的に行うには冷間ロール成形機械で溝形断面を次の方法で成形すれば上記のタンジェントベンダーでの曲げと同じ効果を生むことに気付いた。すなわち、溝形断面の底部(ウエッブ)の幅を順次狭める方法での成形を連続的に行えば、溝形断面の曲げ角部分は成形の進行と共に、曲げと曲げ戻しの作用を受けるため、フランジ部分は上記と同様にスプリングバックによってある曲率に変形するという考えである。平成13年度は、この仮説の実証実験を21ロールで行った。また、21段成形の他に、21段の内から数段を除外した18段、16段、14段成形等の場合におけるロールパススケジュールと製品(パイプ)精度、製造の難易等についての調査も行った。この結果、パイプはそり、ねじれ、ふち波の発生しないほぼ真直な形で成形できた。また、ロール調整は小径ロールで強引に成形する方法に比べ非常に容易であった。14年度は成形段数を更に減少し遠隔操作型4段冷間ロールで、ばね板のパイプ成形を行う予定である。
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