薄板ばね材(板厚0.1mm)の塑性加工に関する研究である。具伴的には、本薄板ばね材で情報機器部品である、アンテナを製造する、パイプ成形を行った。 本材は、ばね材であることから、これを、従来の曲げ加工方法で曲げを行うと、スプリングバックによってパイプ形状にならない。これは、本材に限らず、高強度材、新素材などの材料加工に際しては、常に生じる問題であることから、このような材料に対する塑性加工(曲げ)技術の開発研究が望まれていた。 そこで、研究申請者は、3種類の加工方法で薄板ばね材のパイプ成形を行った。第一の方法は、従来の曲げ方法のように、薄板ばね材をパイプ状に曲げ、これを更に絞りながらパイプ直径を小径にする方法である。このようにすることによって、ばね材表面のひずみを増大する。実験の結果、(1)目的の形状のパイプは得られたが、パイプ板縁部に座屈(縁波)が生じやすく、成形が安定しないこと、(2)パイプの縁波を除去する方法を発見したが、パイプのねじれ、そりは除去できないなどの製造上の問題は残った。 このような理由から、第二の方法を考案した。この方法は、ばね材の板両縁から90度の曲げ加工を行うことを繰り返す方法である。すなわち、ばね材の90度の曲げ位置を徐々に、板両縁から板中央に移動させる方法である。この方法によると、曲げられた部分は、平らな板に戻されることになる。しかし、平らに戻されても、スプリングバックによってばね板は円弧状に変形する。この、スプリングバック後の円弧を連続させることによってパイプを成形する方法である。第一の方法は、スプリングバックを強引に抑える方法であるのに対して、第二の方法は、スプリングバックを利用する方法である。 第三の方法は、第二の方法は、多くの冷間ロール成形スタンド(直径12mmのパイプ成形に対して約35段)を必要とするため、これを少ない成形スタンドで成形しようとするものである。実験の結果、4段成形を可能にした。
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