研究概要 |
本年度の主たる研究目的は,前年度に構築した計測システムを用いて実験データを収集するとともに,そのデータ解析を中心に行い,精密組立作業がどのようなプロセスで進行するかという課題を,物理情報の観点より解明することである.本年度はまず計測システムの改良から取り組んだ.軸受部(外筒)のついたポリゴンミラー装着のための挿入ジグ側には,姿勢測定のために小型ミラーが取り付けられている.そこに上方よりHe-Neレーザ光を照射し,その反射光が上方約2.5mの高さに設置したスクリーンに投影され,ポイントの軌跡を下からCCDカメラで撮影した.影速度は毎秒30フレームであり,姿勢変化の読み取りは画像処理によってレーザポイントの座標位置を計算し最終的に角度情報に変換している.6軸力センサは付属のインターフェースボードを介して一定のサンプリングレート(500Hz)で取得が行われ,本研究用に開発した高分解能2軸モーメントセンサは動歪み計からの出力をデータロガー(キーエンス製)により500Hzでサンプリング,姿勢計測は上述のように毎秒30フレームのサンプリングとなる.したがって解析の都合上これらの同期を正確に取る必要がある.そのため,モーメント情報と姿勢情報の同期を取るために半導体レーザーをスクリーンに照射し,6軸力センサとモーメントセンサの同期は実験開始前に物理的なパルスを与えることで行った.この計測システムを用いて,熟練者・非熟練者による多数回の作業計測実験を行ったところ,次のようなことが明らかになった. 熟練者と非熟練者の大きな違いは,モーメント負荷の与え方であり,素人の場合,無理やりモーメントを与えながら挿入してしまうためミラー側(ポリゴンミラー+挿入ジグ)の自重以上の負荷をかけてしまうが,熟練者はそのようなことが無く毎回同じように組立を繰り返している.挿入開始時の心合わせ部分では軸と軸受の双方に設けられた微小面取り部分を利用した調心動作を行っていると考えられる.力とモーメントの計測結果を比較するとZ軸方向の負荷が抜けたときにX, Y軸周りのモーメントが少し大きな値になっていることから,挿入の過程ではジグの傾いている方向がわからなくても上向きの力を作用させることで自動的に姿勢を補正する方向にモーメントを作用させ挿入を行っていると考えられる.
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