研究概要 |
本研究ではボールエンドミル等の曲線切れ刃エンドミル加工の切削力と切れ刃振動解析手法を開発し,金型加工における制振型曲線切れ刃エンドミルの設計指針を示すことを目的としている.今年度は切れ刃形状設計を目的として,平成13年度までに開発した切削過程シミュレーションを用いて,まず切れ刃形状が切削力特性に及ぼす影響を調べた.一枚刃スローアウェーボールエンドミルを対象として,軸方向傾斜角,半径方向傾斜角,切れ刃ランド幅が切削力の低減効果に及ぼす影響を調べた.その結果切れ刃ランド幅を小さくして切りくず接触長さを拘束することによって,切削力低減効果が得られることを示し,その妥当性を切削試験により明らかにした.本解析により,切りくず接触長さの拘束効果による切削力の低下は,(1)すくい面における工具と切りくずとの接触長さの減少によって摩擦力が低下する,(2)切削モデルが単一せん断面モデルから二段せん断面モデルに転化し,見かけ上せん角が大きくなることを示した.また解析で得られる切削力と実測のそれとがほぼ一致しており,解析手法の妥当性も確認した. 以上の知見に基づき,切れ刃振動解析を行ない,切れ刃ランドにより振動抑制効果を解析的に示した.なお切れ刃振動解析については,実際に加工中の工具軸振動を測定して解析結果と比較することにより,解析手法と加工中の切削動特性パラメータの妥当性を確認している.解析の結果,切れ刃ランドがない工具で振動が生じる条件でも,切れ刃ランドをつけた工具では大きな振動がないことを示した.これにより制振型曲線切れ刃エンドミルの設計指針の一つとして,切れ刃ランドをすくい面につけることにより,切削力の低減効果と振動抑制効果があることを示した.
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