本年度は、前年度の研究結果を反映した製品モデルを計算機内に構築し、製品モデルベースの機械部品の再利用支援環境の構成を提案した。さらに、この環境を循環型生産ラインに取り込み循環型製品ライフサイクル全体を支援することを提案した。その方法は、次のとおりであった。 1.前年度の研究結果により製品を構成する各部品の幾何品質表現の枠組みが与えられたので、この幾何品質表現をもった製品モデルを、二つの例題製品について実際に計算機内に構成した。 2.各例題製品について、前年度の研究結果として提示されている原因リストと製品モデルを利用して、製品を構成する各部品の幾何的劣化状態を予測し、結果を部品の構成幾何要素の幾何品質記述として各部品モデルに付加した。これにより、製品がその使用期間を終えて部品に分解された場合、最終使用時の製品挙動や製品の使用履歴から、各構成部品の劣化状態として部品モデルに反映する方法を提供した。 3.劣化状態が部品の幾何要素に反映された部品モデルを素材ライブラリに登録し、新造の無垢な素形材のモデルと一度使用され再利用を待つ部品モデルの両方のモデルが、混在して登録できるように素材ライブラリを構成することにより、多品種極少量生産において、再利用される部品は以前に使用されていた製品種別とは無関係に別の製品でリユースすることを前提にした循環型生産システムを構成できることを示した。すなわち、工程設計システムにおいて、組立て部品としてそのまま使えるものがあるか、ない場合には加工量(ないし加工工程)が一番少ないものはどれかということの検索のために、工程設計システムが素材ライブラリを参照するようにシステムを構成することにより、部品のリユースラインを従来の生産ラインに接続することが可能となった。以上により循環型生産システム構成の基礎を与えた。
|