研究概要 |
近年わが国においては高齢化が進み、今や50歳以上の人口が全体の34%を占めるに至った。これに伴って人口当りの老人性疾患による患者数が急増傾向にあり、60歳以上では80%以上が何処かの関節に障害を認められるとの報告もされている。このような関節障害の治療法として人工関節挿入手術があり,その需要も増加の傾向を示している。しかし、インプラント材としてステンレス材料のような鉄系材料が人体に使用されている場合には磁気共鳴画像診断装置(MRI)の使用が困難であり,他の内臓器官を調べる時にも画像化することに障害を来たすことが問題視されている。 本研究は、MRI計測に支障をきたさないチタニウムインプラント用部品を患者個々のサイズ・形状に合った部品として供給するための基礎的加工技術の開発を行うものである。本年度はチタニウム系材料の基礎的加工特性の把握について検討した.(1)工具材料のチタニウム系材料の加工性改善については、チタニウム系被削材と溶着性が少なく、高温安定性に優れたバインダレスcBN材料が適正具材料であることを明らかとした。また、従来この材料の加工に使用される超硬合金工具の約5倍(250m/min)の切削速度向上が可能であることを明らかとした。(2)工具刃先形状については切れ刃近傍が高温となることが予測されるため、バインダレスcBN工具材料の低摩擦係数特性と高い曲げ強度特性(1.6Gpa)を利用し、すくい角をシャープ化することが有効であることを明らかとした。(3)加工雰囲気については高温高酸化化雰囲気が予想されるため30Mpaの圧力で切削油剤を供給することにより工具に対するチタン系材料の溶着を抑制可能であることを明らかとした。(1)から(3)の結果を踏まえてミーリング加工を行った結果、500m/minの高速切削条件下においても十分な加工が可能であることを明らかとした。
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