研究概要 |
1.スラリージェット式摩耗試験装置を用いて、TiN単層膜とナノ多層被膜(TiN/TiAlN, TiN/NbNなど)に固体粒子を高速で衝突させ、PVD被膜の摩耗特性を研究して、以下の結果を得た。 (1)被膜の耐摩耗性と被膜厚さ、および露出した母材の耐摩耗性について、再現性の良い結果が得られたことを確認した。 (2)衝突させる粒子がアルミナとSiCでは、摩耗速度は前者の方が小さいが、種々の被膜間の耐摩耗性のランキングは同じであった。 (3)種々の被膜について行ったスクラッチ試験とナノインデンテーション試験結果と被膜の耐摩耗性には明確な相関関係はなかった。 (4)被膜の耐摩耗性のランキングと、従来のディンプルグラインダ法やマイクロアブレージョン法によるそれらとの相関は小さい。 (5)市販のコーティングドリルに本試験法を適用した結果、耐摩耗性と被膜厚さについて再現性の良い結果が得られたことから、本試験法は実用的にも製品に被覆された被膜の耐摩耗性評価の加速試験として有用であることがわかった。 2.スラリージェット中の固体粒子による摩耗の機構を解明するために、1個の粒子の衝突による表面変化が観察できる装置を新たに試作し基礎的研究を行って、以下の結果を得た。 (1)スラリージェットは、霧状の噴流と固体粒子からなり、表面の変形は固体粒子の衝突によるものである。 (2)固体粒子の衝突速度は非常に速く、100m/sにも達する。 (3)軟らかい材料に固体粒子が衝突するときの損傷は、材料の変形による盛上がり部が繰り返し衝突を受けて破壊することによると考えられる。
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