研究概要 |
フレッテイングは繰り返しマイクロスリップに曝される表面に発生する顕著なトライボ損傷である。このフレッテイング現象が改質膜で被われた表面上で如何様に発現するかそして結果として必ず発生する表面亀裂が薄膜上でどのような挙動を示すか、また薄膜を介して母材へ如何様に亀裂を伝播させるかという現象の発生形態とその機構を明らかにすることに,実験研究の主眼を置いた。 本研究においてはまず被覆法の異なる薄膜を全て同一の母材の上に施し、フレツテイング用試験片として実験に供した。そこで試験片材料としては被覆していない炭素鋼S45C、被覆材としてはS45CにTin, TiCNおよびCrNの薄膜を施した材料,厚膜材料としてはTiO2,Cr2O3の被覆材を用いた. これらの材料に対する実験計画として2通り、即ち薄膜の接着強度の評価のため全ての試験片について引っ掻き試験とフレッテイング試験の両方を行った。この研究は2年間に亘る研究だが、被膜の引っ掻き強度試験については前年度に終わり、今年度は主にフレッテイング試験での薄膜表面上での亀裂損傷の発生やその亀裂の伝播による損傷拡大等について詳細な実験を続け興味有る結果を得る事が出来たのでここに纏めている。薄膜を施した被覆材においてはフレッテイングのような微振動下で繰り返しマイクロスリツプを受ける場合は表面に発生した損傷亀裂の伝播に特徴的に薄膜コーテイングの影響が現れる。すなわち接触表面の接触域外に発生した亀裂は接触域を囲む様に大きく成長しているが,約2μm程の薄膜を介すると母材,すなわち深さ方向への亀裂成長は著しく抑制されている。この事実は被覆材が常に摺動環境に曝されるトライポロジー材料として如何に好ましいかということを示唆するもので,今後の様々の摺動条件下での体系的な緻密な実験研究を続けたい。
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