研究概要 |
鋼帯ばねはテレビカメラや医療器具の昇降,コンピュータの蓋の開閉,CDの出し入れなど,多くの機構に利用されているが,変形特性の厳密な解析は未だ成されておらず,簡単な線形理論によって大雑把に把握されているだけであり,その設計指針にはほぼ50年前の考え方が未だに使われている。こうした鋼帯ばねの動作精度を向上させたり,変形を正しく制御するためには,変形挙動の正確な把握が工業的に重要な課題である。以上の点に鑑み,本研究では鋼帯ばねの厳密な変形特性解析を行ったもので、希少な解析例であると云える。る。昨年(平成13年度)は鋼帯ばねについて,ある特定直径のドラムに巻かれた薄板はりがフラツトなはりに変形するとしてモデル化し,微分幾何学上厳密な式を適用することによって基本的な変形解析理論を導いた。また理論計算に基づく変形の様子を視覚的に把握できるように計算結果をプロッターなどの出力機を利用して出力し,大変形状態のビジュアル化を図った。さらに,導かれた解析理論の適用性を確かめるために,実際に変形実験を行う必要があり,変形実験装置(1号機)を試作した。こうした実験には一般に市販されている材料試験機を使用することができず,実験に適合した新たな装置が必要なためである。本年(平成14年度)は,昨年度試作された1号実験装置の不具合を改良した2号試作実験装置(変位センサーが付属)を製作するとともに改良2号実験装置を用いて,薄板試料で作成された巻付き鋼帯ばね(定荷重ばね)について、本格的に,変形特性測定実験を行った。こうして得られた実験結果と解析理論とを比較し,解析理論の有効性や適用性について検証するとともに,巻付き鋼帯ばねの変形挙動の厳密評価法を確立し,新しい設計ガイドを策定した。さらに,以上の研究で得られた理論的,実験的解析結果,知見について,加入学会(機械学会,ばね技術研究会など)で研究成果の報告を行った。
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