研究概要 |
本研究では転がり軸受の潤滑診断を目的として,玉軸受の外輪とハウジングのはめ合い面に超音波を入射し,そこでの固体接触面積に応じて反射するエコー高さの変動を基に,軸受の滑滑状態や異常の内容の推定を試みている.平成13年度は主として,異物の噛み込みや損傷の半定量的な把握,なじみや劣化の進行過程の観測,軸受寿命の予兆を早期に検出できるパラメタの提案を目的とした. (1)左右エコー高さ比の相関のずれ,エコー高さ比の最大値や平均値の変動幅,荷重を支持している転動体が超音波照射領域を通過する際のエコーの変動波形のゆらぎや乱れ等を総合して,軸受の劣化具合や滑滑状態の悪化を判断することが,現場での常時モニタリングに適していることが分かった. (2)突発的な増減を示すエコー高さ比Hの挙動と,そのような異常が発生しなかったと仮定したときのHの波形との差から,異常の発生頻度やその影響度合いを,ある程度定量的に把握できる可能性を明らかにした. (3)単位時間当たりのエコー高さ比の突発的な増加回数から摩耗粉の噛み込み頻度を,そこでのエコー高さ比の変化から噛み込みに伴う転動体支持荷重の増加を,エコー高さ比が増大している時間から噛み込んでいる摩耗粉の影響長さを,それぞれ,半定量的に把握可能となった.これらのパラメタは従来の振動法やAE法ではほとんど測定不可能な量である. (4)エコー高さ比の一時的な低下は,主として内輪や転動体での圧痕やミクロなピッチング等の損傷の発生を意味している.(3)と同様の検討を行い,損傷箇所の数,転動体支持荷重の減少量,損傷部の影響長さを,半定量的に把握することができた. (5)上記の各パラメタの経時変化を観測することで,軸受の劣化の進行や,寿命の予兆の早期検出が可能となった. (6)CAEによる損傷軸受の解析から,(4)のエコー高さ比の低下が転走面上の微小損傷によるものであることを確認できた.
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