研究概要 |
本研究の目的は、摺動用軽量化Al合金基複合材料として期待されている、Al-Si合金含浸グラファイト複合材料(以下、アルミ炭素複合材)の摩擦・摩耗特性の向上策を調べることである。この複合材は粒子状graphiteを60%含み、優れた自己潤滑性能を発揮する。まず、低摩擦・低摩耗となる湿り空気中にて、同複合材対各種金属材料の組合せで荷重一定の摩擦・摩耗試験を行い、graphite付着皮膜の性状を調べて摩擦・摩耗が最小となる最適な材料組合せを求める。次に、同複合材対軸受鋼の組合せで潤滑油中摩擦・摩耗試験を行い、潤滑方式の違いによる摩擦・摩耗特性を調べる。 ピンにアルミ炭素複合材を用い、ディスクに同複合材、Al-Si合金(基材,AC8A)、graphite(基材)、軸受鋼(SUJ2,熱処理なし)、炭素鋼(S35C)、黄銅(60/40)及びステンレス鋼(SUS304)を用いて、荷重100N、すべり速度0.15m/s、全すべり距離3600mの条件で、湿り空気(24℃,50%RH)中において摩擦・摩耗試験を行った。試験開始から終了までピンとディスクの摩耗挙動と接触面間の摩擦係数を計測した。実験結果から試験中の平均摩擦係数μと初期、定常期の摩耗率wの関係を求めた。これより、高摩擦、高摩耗率(μ>0.20,w>10^<-7>mm^3/mm)となる材料の組合せ、高摩擦、中程度の摩耗(μ>0.20,10^<-8><w<10^<-7>mm^3/mm)となる組合せ、低摩擦、中摩耗(μ<0.20,10^<-8><w<10^<-7>mm^3/mm)となる組合せ及び低摩擦、低摩耗(μ<0.20,w<10^<-8>mm^3/mm,)となる組合せに分類できる。相手材が基材のAl-Si合金であるとき高摩擦・高摩耗となり、graphiteでは高摩擦・中摩耗となる。炭素鋼、黄銅、ステンレス鋼を相手材にすると、低摩擦になるが中程度の摩耗である。意外な結果ではあるが、複合材同士の組合せで低摩擦・最小摩耗(w〓10^<-9>mm^3/mm)になった。アルミ炭素複合材は優秀な摺動材と言える。 次にアルミ炭素複合材対軸受鋼の組合せでエンジン基油(SAE30+AO)中摩擦・摩耗試験を行い、潤滑方式の相違による摩擦・摩耗特性を調べた。試験前にピンとディスクの接触面上に一滴(0.03cc)を滴下すると、摩耗率は初期(w〓10^<-8>mm^3/mm)にやや高く、無潤滑の場合の値(w〓5x10^<-8>mm^3/mm)に近いが、定常期では浸漬状態の値(w〓5x10^<-10>mm^3/mm)に低下する。摩擦係数は初期に金属凝着により高く、定常期でもやや不安定であるが、その平均値は0.08程度で浸漬状態の値(0.04)に近い。また、実験中に滴下を繰り返しても、摩擦の顕著な低下は見られなかった。
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