| 研究概要 |
アルゴン、窒素、空気、酸素の乾湿ガス葉境中にてアルミ炭素複合材対軸受鋼(SUJ)の組合せで無潤滑下のピン・ディスク形摩耗試験を行い、相手材の摺動面上に形成される付着被膜の性状と特徴について調査し、同複合材の摩擦・摩耗特性の評価を行った。その結果、アルミ炭素複合材は湿度依存性を持ち、湿りガス環境中で基材のAC8A及びGraphiteよりも耐摩耗性・摩擦特性に優れ、材料の複合化によるトライボロジー特性の向上が顕著に認められる。試験開始直後から付着被膜が相手材の摺動面上に形成され、特に湿りガス環境中で効果的な固体潤滑膜として機能する。その被膜はGraphite粉内にAl-Si合金摩耗粉を巻き込み、のしつぶし作用によって形成される。湿りガス環境中の酸素が減少する程、密着性の良い固体潤滑膜が形成され、耐摩耗性の向上に寄与する。湿り環境中では特徴的な現象としてピンの持ち上がりが生じ、その高さが大きくなる程低摩耗となる。
次に、アルミ炭素複合材に対する最適な相手材料を知るため、ピン・ディスク形摩擦・摩耗試験を行い、摩擦・摩耗が最小となる組合せを調べた。複合材同士の組合せは低摩擦・低摩耗をもたらし、最も優れた組合せである。複合材対鉄系材料(SUJ2,S35C,鋳鉄,スラスト軸受)の組合せは低い摩擦・中程度の摩耗を示し、同種材の組合せに次ぐ優れた組合せである。複合材対基材(AC8A, Graphite)の組合せでは中程度の摩擦・摩耗が生じ、良好な組合せではない。複合材対Titaniumでは高摩擦・局摩耗の状態が生じて、全く不適切な組合せである。複合材対SUJ2と複合材対スラスト軸受では摩擦・摩耗はほぼ同じであり、硬さの影響は見られない。複合材対Graphite,純銅,Brass, Titaniumの組合せでは、相手材に摩耗が生じるため、摺動面の組合せとして不適である。
エンジン基油を用いて、アルミ炭素複合材、基材(AC8A及びGraphite)をピンに、SUJ2をディスクに用い、一方向すべり摩擦・摩耗試験を行い、浸漬、滴下(試験前のみ)による潤滑方式でトライボロジー特性の比較を行った。複合材ピンの場合、滴下量を増加させると、摩擦係数と摩耗率は浸漬状態のそれらの値に近づき、微量の潤滑油滴下でも油膜破断が起きない。AC8Aピンの場合、滴下量によって油膜破断迄のすべり距離が変化する。油膜破断迄は摩耗は殆ど生じないが、摩擦係数の変動は大きい。油膜破断後は摩耗深さと摩擦係数が急激に上昇する。Graphiteピンの場合、滴下により摩擦係数と摩耗率は無潤滑状態よりも低下するが、滴下量を増加させても摩耗率は殆ど変化しない。以上よりこの複合材は基材と比較して過酷な潤滑条件下で使用可能な優れた摺動材料である。
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