研究概要 |
生分解性作動液や水道水は,環境と調和する.しかしながら,これらの液体を液圧システムに用いた場合,キャビテーションならびに壊食が,信頼性や性能の点で問題となる.本研究では,キャビテーションならびに壊食を効果的に抑制する方策を探ることを目的として,液体の種類に着目した,キャビテーションの発生ならびに壊食の機構を実験的に解明する. 本年度は,水道水ならびに鉱物油を実験対象とした.試験装置の方法は,液圧機器内部で生じるキャビテーション壊食との適合性が高い,噴流衝突型とした.試験装置は,水道水用と鉱物油用の2回路を製作した.ただし,試験室や絞りは,いずれの液体に対しても同一寸法とした.実験条件は,上流圧力10MPa,下流圧力0.1〜0.3MPa,液体温度40±1℃,スタンドオフ距離7.5〜35mmなどとした.実験は,高速度カメラならびにヴィデオカメラによりキャビテーション噴流を撮影し,その画像データを電子処理した.平行して,4時間の壊食実験を行い,設定時間ごとに試験片の質量測定,噴流衝突面の表面計測,観察を行った. 圧力,絞り出口から噴流衝突面までの距離,液体の種類などをパラメータとして,噴流の写真や画像処理データと壊食実験のデータとを比較した結果,以下の結論を得た.噴流衝突面の画像と壊食量との比較では,下流圧力が減少するほど、キャビテーションノ噴流の到達距離が長くなり,壊食量も増加した.水道水と石油系動作油の比較では,水道水のキャビテーションの噴流の方が,キャビティークラウドの存在確率の高い領域が大きく,壊食量も多かった. 来年度は,これらの成果を踏まえて,生分解性作動液に適合する試験装置の設計,改良,製作も含めて実験を継続し,データの充実を図る予定である.
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