研究概要 |
生分解性作動液や水道水を,従来の鉱物油ベースの液圧システムの動力伝達媒体として用いれば,自然環境との高い調和を図ることができる.しかしながら,その構成機器の信頼性や性能に及ぼすキャビテーションならびに壊食の影響を明確にしておく必要がある.そこで,その特性や機構を解明することを目的として,特に液体の種類に着目した実験的アプローチにより研究を行った. 試験装置は,液圧機器内部で生じる壊食との適合性が高い噴流衝突式を採用した.供試液体には,水道水,合成系生分解性作動油(VG46)および鉱油系油圧作動油(VG32とVG46)を用いた.実験条件は,上流圧力10〜18MPa,下流圧力0.1〜0.5MPa,液体温度40〜65℃,スタンドオフ距離7.5〜35mmなどとした.壊食実験は,最長8時間とした.設定時間毎に,試験片の質量測定,試験片の噴流衝突面の表面計測および観察を行った.平行して,高速度カメラならびにヴィデオカメラによりキャビテーション噴流を撮影し,その画像データを電子処理した. 壊食量を比較すると,水道水が著しく多かった.以下,VG32鉱油,VG46鉱油,VG46生分解性作動油の順となった.キャビテーション係数が小さい方が,その差異は顕著であった.各作動油ともに,概ね液温の高い方が壊食量は多かった.ただし,液温の低い方が,その壊食量の差異は顕著であった.一方,基本的に,作動油の種類は,スタンドオフ距離,上流圧力およびキャビテーション係数に対する壊食量および壊食リング径の傾向,ならびに最大壊食量を示す距離などに影響を及ぼさなかった.噴流衝突面の画像と壊食面の写真を対比させると、キャビティークラウドのある存在確率の位置と壊食の激しい位置はほぼ一致した.噴流側面の画像と壊食量を対比させると,キャビテーション係数が小さいほど,その噴流の到達距離は長く,壊食量は多かった.
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