独自に開発した粒子法であるMPS法(Moving Particle Semi-implicit Method)に表面張力の計算モデルを組み込み、液滴の振動の数値シミュレーションをおこなった。さらに、単一液滴が他の流体中を運動する場合の液滴の分裂過程の数値シミュレーションをおこなった。これらの研究により、以下の結論を得た。 ・液滴の振動を精度良く計算するためには、およそ100個以上の粒子が必要であることがわかった。これは、本研究で用いた表面張力の計算モデルが、ある程度多くの粒子を用いることを前提としているためである。 ・本シミュレーションから、液滴の分裂の限界を与える臨界ウエーバー数が13と得られた。これは従来の実験と定量的に一致している。 ・臨界ウエーバー数よりやや大きいウエーバー数では、1個の液滴が2個に分裂することが実験で知られており、本シミュレーションでもこれが再現された。液滴が分裂に至るメカニズムとしては、液滴周りの流れによって引き起こされる液滴を引きちぎろうとする力が、液滴形状を円形に保とうとする表面張力に打ち勝つためであることがわかった。 上記の結果より、MPS法による液滴の分裂過程のシミュレーションが定量的に検証された。こうしたシミュレーションは、液面形状の著しい変形を扱う必要があるため従来は成功していなかった。本研究で粒子法を用いることでこれに初めて成功した。 液滴の分裂過程の定量的なシミュレーションが可能になり、臨界ウエーバー数が求められるようになると、従来の気液二相流解析では経験的な相関式でしか与えることができなかった界面面積がシミュレーションによって直接得られると期待できる。平成14年度は、単一液滴のシミュレーシヨンに関する平成13年度の成果にもとづいて、気液二相流における液滴流れの界面面積の予測に研究を発展させていく予定である。
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