流体運動の基礎方程式から明らかなように、渦度分布とエネルギー散逸率の分布は、変動圧力場と密接に関連している。しかし、従来の実験的研究は渦度測定およびエネルギー散逸率の測定に重点がおかれ、それらの情報のみから乱流の普遍構造を理解してきた。これは偏に変動圧力測定が技術的に大変困難であり、かつデータ解析には十分な経験が要求されるためである。一方、近年の等方性乱流の数値計算では、一般の室内実験で達成できるレイノルズ数に迫るR_λ〜400が実現されている。数値計算では圧力場は完全に把握できることから、詳細な解析が続々と報告されている。ここで議論する普遍法則とは、例えば、変動圧力のエネルギースペクトル型がある。Kolmogorovは慣性領域における圧力スペクトルのベキ指数が-7/3乗であることを今から50年以上前に推測している。そしてその後の実験的研究は、必ずKolmogorovの仮説に従い、指数が-7/3乗になることを報告してきた。しかし、最大規模の数値計算は、指数が-7/3乗とはならず-5/3乗に極めてちかくなることを明らかにした。本研究では、変動静圧の高精度の計測法を確立し、エネルギースペクトルに-7/3乗則が確かに存在することを実験的に示した。また、計測上の問題となるヘルムホルツ共振、内部共鳴を数値的に除去する方法を考案した。マイクロファオンおよび圧力トランスデューサを併用し、微小変動圧の計測を約5kHzまで可能にした。 これらの測定方法を円柱後流におけるエネルギー収支の定量的評価に用いた。従来では圧力拡散項を直接測定することが出来なかったが、本手法によりそれが実現された。乱流場の微細渦構造に着いては、現在も解析を進めている段階である。時間分解能に関しては改良がなされたが、空間分解能に着いては、今後も改善できるように研究を進めていく予定である。
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