本年度は、昨年度製作した100Hzまでの高速で振動する声帯をもつ喉頭を模擬した模型を用い、流れの可視化、圧力計測を行った。 流れの可視化については、メタルハライドライトやレーザーシートの連続光や断続光の光源、線香、ドライアイス、たばこなどの煙の各種組合せを用いたが、明瞭な映像を得ることが出来ず、振動中の流線の解析を行うことが出来なかった。 圧力は装置直付の圧力変換器により計測した。声帯部流路幅の中心値、振幅、初期流量のいくつかの組合わせに対して、0から100Hzまで10Hz毎に声帯模型を振動させて、声帯部より流路幅の80倍の距離上流の位置から40倍下流の位置までの計13カ所の圧力を計測した。各位置の圧力は、10Hzまでは、狭窄が拡大するときと縮小するときでほぼ対称で、静的な圧力とほぼ一致しているが、20Hz以上では、非対称となり、非定常の効果が表れる。圧力波形に対する声帯模型の振動数の影響は、パラメータの組合わせで異なるが、50から80Hzで急に傾向が変わることが多かった。 次に、当該研究者らが提案している剥離・再付着流モデルによる理論値との比較を行った。振動数が高くなると、計算モデルの境界で仮定していた圧力一定の条件が適当でないことが分かったので、実測値を境界条件として使用した。モデルは、50から80Hzで発生する傾向の変化は予測できなかったが、その振動数までの圧力波形は精度良く予測することができた。 得られた計測値、理論値を解析した結果、この傾向の変化の原因の一つは、声帯模型の0.1mm程度の隙間の制御が高振動数で上手くできなかった可能性と声帯部の隙間を通る流れの実質の流路幅と実際の流路幅とが相当異なっている可能性が考えられた。声帯部の流路幅を実際より狭く見積もり、圧力分布を計算すると、比較的類似の傾向が得られた。今後さらなる検討が必要である。
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