声の音源となる声帯の自励振動に直接関係する、振動し、剥離、再付着する声帯まわりの流れを精度良く予測するモデルを作成することは、音声の解析において非常に重要である。当該研究代表者らはこれまでに、流れの剥離、再付着を考慮することが出来る非定常一次元流モデルを提案し、低振動数で振動する狭窄を有する流路内の圧力を精度良く予測できることを確認している。 当該研究課題では、実際の声帯振動数に近い100Hzまでの高速で振動する声帯を持つ喉頭模型を製作し、模型内の剥離、再付着し、振動する流れを計測し、基礎データを取得すると共に、提案している数学モデルの妥当性の検証、計測結果を踏まえた、改良の検討を行った。 まず、100Hzまでの高速で振動する声帯をもつ喉頭を模擬した模型を製作した。声帯駆動部はモータ・偏心カム系とし、圧力計は模型に直に設置することとした。流れの可視化については、照明、煙の各種組合せを用いたが、明瞭な映像を得ることが出来ず、振動中の流線の解析を行うことが出来なかった。 声帯部流路幅の中心値、振幅、振動数、初期流量のいくつかの組合せに対して、流路長手方向の圧力分布を計測した。圧力は、20Hz以上で非定常の効果が現れた。また、振動数を高くしていくと50から80Hzで圧力波形の傾向が急に変わった。 次に、当該研究者らが提案している剥離・再付着流モデルによる理論値との比較を行った。モデルは、50から80Hzで発生する傾向の変化は予測できなかったが、その振動数までの圧力波形は比較的精度良く予測することができた。 得られた計測値、理論値を解析した結果、この傾向の変化の原因は、声帯模型の0.1mm程度の隙間の制御が高振動数で上手くできなかったことや声帯部の隙間を通る流れの実質の流路幅と実際の流路幅とが相当異なっていることが考えられた。可視化方法も含め今後さらなる検討が必要である。
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