研究概要 |
本研究では,環境問題や防災問題にかかわって,植生流体力学的立場から森林が持つ防風機能のメカニズムを,風洞実験及び曳航風洞実験を中心として明らかにすることを目的とする.今年度は2年計画の初年度であり,主に大型乱流風洞による予備的な実験が下記のように行われた. 1.実験対象の樹木として,風洞測定部断面形状,枝葉のつき方,風の透過性などを考慮して,樹高1.2m,樹木幅0.7mのサカキが選定され,風速6m/sの一様流中に設置された. 2.樹木の振動は,各部位に接着されたひずみゲージにより,また,樹木下流部の乱れ特性はI型熱線プローブにより測定された.これらのデータはスペクトル解析された. 3.樹木下流域の平均速度は,樹木直下では葉のつき方により強く影響を受けたランダムな分布となっている.しかし,樹高の70%程の下流位置では,流れが透過しない物体と同様な後流型速度分布が形成される. 4.更に,流れの乱れ強さも,平均速度分布と同じように,樹木直下の領域では枝葉の影響を強く受けた分布となり,一方,樹高の90%程の下流では不透過物体後流と同じく二つのピークをもつ乱れ強さの分布となる. 5.樹木の振動のスペクトルと乱れ速度のスペクトルとの関係も明らかにされた. (1)葉の振動スペクトルには,葉固有の高い周波数と多数の葉を含む枝の低い周波数と二つの強いピークを示している. (2)高い葉固有の振動スペクトルは,樹高の70%程の樹木下流域まで検知されている.しかし,乱れのスペクトルには,枝の振動を示す低周波数のピークは測定されていない. 今後の風洞実験の研究では,他種類の樹木の検討や樹木本数の増加による影響などを検討する必要がある.更に,曳航風洞実験による樹高数メートルの樹木に対する計測を実施し,より大きな樹木の揺れの影響を解析することが求められている.
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