研究概要 |
本研究では,環境問題や防災問題にかかわって,植生流体力学的立場から森林が持つ防風機能のメカニズムを,風洞実験及び曳航風洞実験を中心として明らかにすることを目的とし,下記の実験を行った.得られた主な結論の要約を示す. 1.乱流風洞実験による森林模型の葉面積指数が模型下流域の流れ場に及ぼす効果 (1)供試森林模型は多孔平板を組み合わせ構成され,これらの樹木模型の配列を変化させることにより,葉面積指数が熱帯雨林程度の9から落葉広葉樹の4.5,松林の3,更に極端に疎な1.8までの広範囲に変化させた. (2)これらの森林模型に対して,風速10m/sの一様流を流すことにより,森林模型下流域の流れ場,特に,平均流速の分布や乱れ強さの分布などを熱線流速計により測定を行った. (3)葉面積指数が3以上の森林模型の下流域において,葉面積指数の変化により平均速度分布は大きく変化はしていない.一方,乱れに対する葉面積指数の影響は,平均速度の場合よりも大きく,特に樹冠部下部の下流域において顕著である. 2.曳航風洞による実物の樹木の下流域における流れの場の計測 (1)JR鉄道総研旧リニア実験線ガイドウエイ(宮崎県日向市)を曳航風洞として活用した. (2)成長したモミの木(樹高2m,樹木の最大直径80cm)を対象とし,この樹木を10m/sで押すことにより樹木下流域の流れ場を熱線流速計により計測した. (2)最大樹木幅となる樹木部分の樹高程度の下流域では,約85%の速度欠損率となっている.しかし,更に樹高の2倍程度下流になると速度欠損率は約30%に減少する. (3)樹高程度の下流域で平均速度の高い欠損率を示す領域での乱れ強さは,約10%に抑えられている.しかし,樹木幅の下流位置では,乱れ強さは30%〜40%にも強められる.これは,急激な平均速度分布の勾配による乱れの発生と関連がある. (4)樹高の2倍程度の下流域における乱れ強さは,35%程度のほぼ一定の値となっている.
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