研究概要 |
壁面から多量の微小気泡を乱流境界層中に噴き出すと,壁面摩擦抵抗が数10%低減されることが知られており,省エネルギーの観点から注目されている.摩擦抵抗を減少させるには,気泡径にある範囲が存在することが知られている.しかしながら,従来は多量の気泡を噴き出す実験が一般的で,個々の気泡の生成機構を検討した研究例は少ない. 本研究では,壁面上に0.2〜0.4mmの径をもつ単一の小孔を設け,乱流境界層中に噴出する気流からの気泡の生成機構について検討を行った.孔径,境界層主流速度および気流速度によって変化する気泡の生成過程について詳しく観察した.気流速度が小さいとき,球形に近い単独の気泡が形成される.このときの気泡径を理論的に考察した.気泡に作用する形状抗力,揚力,仮想質量力,表面張力,浮力ならびに気流の運動量を考慮し,力学的な解析から気泡径を算出した.得られた結果は実験値と一致し,気泡径の予測が可能である. 気流速度を増加させると,孔上で気流が柱状に長く伸びる場合へと変化する.高速度ビデオカメラにより,気柱の生成される機構について詳細に観察を行った.気柱には乱流境界層からの大きな形状抗力が作用し,孔上で一旦ちぎれるが,孔からの気流が直ちに衝突して合体する.この現象を周期的に繰り返す結果,孔上には連続した気柱が形成される.気柱からの気泡の離脱は,界面の不安定性により先端から中ほどの部分で生じることを示した.また,気柱の形状が決定される機構を把握するため,気柱形状を理論的に算出した.気柱に作用する種々の力を考慮し,形状を決定する一つの微分方程式を導出した.数値計算により求めたその解は,実際の形状と定性的に一致した.
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