本研究では、レイノルズ平均モデルが従来不得意とされてきた大規模変動を伴う乱流場の数値予測において、予測精度の低下する原因を解明し新たなモデルを提唱することを目的として、数値シミュレーションとPIV計測データに基づいて現象論的なアプローチを行ってきた。研究初年度に行われた結果に基づき、最終年度に相当する平成14年度には圧力-速度変動相関項のモデルに瞬時圧力勾配を用いる方法について検討した。 前年度まで検討を続けてきたPIV速度データを用いた圧力場の推測方法の欠点は、境界条件の取り扱いに関する制限により、圧力の絶対値が決定できないことにあった。しかし、圧力勾配に関しては対流項を考慮したノイマン条件の導入により、数値シミュレーションに基づく考察により、おおむね満足の行く結果となることが新たに示された。また、オーダー評価によれば非定常項を無視することが適当ではないことが明らかとなり、PIVデータに基づく圧力場の推定方法に関してはその適用限界を規定することができた。 また、一様な流れに対し直列におかれた鈍頭柱周りの乱流場に関してPIV計測を行い、変動圧力-速度相関の推定結果に基づき、レイノルズ応力の輸送方程式の生成項との関連において成分間のエネルギー交換機構を考察した。その結果、上流側の鈍頭柱から放出される渦列が下流側の鈍頭柱に衝突する際、主流に垂直な方向への速度変動が極めて大きいこと、また該当するレイノルズ応力成分の輸送方程式の収支バランスを調べたところ、圧力変動による乱れの生成機構が介在することが明確となった。このことは、従来考慮されてこなかった圧力変動項のモデルがこの種の問題の数値予測にとって不可欠であることを支持するものであり、本研究で主眼とする圧力拡散項のモデルについての指針が示された。
|