研究概要 |
本研究は,強いレーザ光を用いて,強い衝撃波と渦輪を生成し,それらの干渉現象やそれらと物体との相互作用によって生じる流れ場を,光学的可視化により観測し,圧縮性乱流現象の基本的な性質を明かにする目的で行っている.本年度は,Nd-YAG-レーザ光(波長1064nm,パルス幅4〜7ns,出力エネルギー450mJ)を集光したときに生じる現象を調べた.強いパルスレーザを大気中で集光すると,集光点近傍の大気がブレークダウンされ衝撃波が生じる.この衝撃波の生成過程や様子また集光点近傍のプラズマガスの状態などはまだ良く調べられていない.そこで,まずレーザ集光後の状態の様子を可視化して観測した.焦点距離100mmの集光レンズでレーザ光を集光し,レーザ光の照射方向に対して垂直の方向から,色素レーザ光を光源に用いたシャドウグラフ法によって側面観測を行った.YAGレーザ光の照射後1μsおきに遅延をかけてフイルム上に記録し観測した.得られた画像から以下のような知見を得た. (1)レーザ集光によって大気ガスは発光する.この自発光はレーザ集光後長時間続く(集光後60μsまでは確認した).そこで,その後の観測ではシャドウグラフの光学系内にピンホールを置いて自発光をカットした. (2)プラズマ集光部を中心として,レーザ照射方向に少し伸びた球状の強い衝撃波が作られ,外側に向って伝播している.球状衝撃波の内部には,レーザ照射の前後の方向へ進行する幾重にも重なった弱い衝撃波が見られ,これらは外側の球状衝撃波に追い付いて吸収される. (3)レーザ集光部,プラズマ状態の領域の内部構造が可視化観測された.レーザビーム軸方向に,低密度の円盤状の層が数層並び全体として球形に近い楕円形状(サイズ約10mm)を示している.層間の密度は高く,層の端からは小さな衝撃波が斜め後方に走っている.前方層内の密度は大きく乱れた状態である. (4)プラズマ状態は長く続き,そこでは活発にエネルギーの放出や吸収が生じているようである.それは,楕円形上のトップからガスが噴出したり,楕円形状部分が分裂して渦形状となって飛翔している様子が観測されることから分かる.このような現象が起る時は衝撃波が生成され,また外側の球状衝撃波は大きく変動する.
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