研究概要 |
本研究では,主に人工心臓として使用される遠心型血液ポンプのインペラー内流れを対象とし,粒子画像流速測定法(PIV)により、インペラーと共に回転する座標系から非定常流速分布を計測し,これまでは準定常の仮定の下で行なわれることが多かったポンプ内部の低流速域の特定や最高せん断応力値の変動のような遠心型血液ポンプの血液適合性の指標となりうる項目の非定常下での評価を行ない,現在行なっている血液ポンプ開発に活用することを目的とする. 本年度は,実験装置の製作ならびに回転座標系からの流速測定システムの構築を中心に研究を進めた. まず,我々が開発している人工心臓用ポンプはインペラー直径が40mmと超小型であるため,可視化用に2倍相似拡大モデルを新たに製作した.インペラー形状は完全二次元羽根とし,回転軸に垂直方向にパルスレーザシートを照射するためケーシングはすべてアクリル製とした.また,舌部に対する翼の相対位置検出のため,光センサーをケーシングに装着し,パルスレーザへのトリガ信号として利用する構造を採用した.回転するインペラーからながめた座標系において計測するための回転像静止装置を設計・試作した.これは直角プリズム,ハーフミラー,モータから構成され,直角プリズムがインペラーと完全に同一の回転軸まわりにモータの半分の速度で回転するように位置の微調整が可能な光学系である.この光学系を用いて,連続光レーザシートによって照射した流れ場を回転座標系から連続光照明下にて観察し,インペラー回転に伴う流速パターンの挙動を明らかにした.インペラー内流れは流出口との相対的な位置関係によって大きく変化し,流出口を通過する瞬間にのみ流路内からの流出がみられた.他の部分では複雑な渦によって流路内部が満たされており,インペラ内部が強い非定常性を持つ流れであることが明らかとなった.ダブルパルスレーザとフレームストラドリングカメラを用いたPIVシステム(TSI Inc.)を用いて流速測定を行なった結果,定性的な挙動を定量化し条件による流速分布の変化,インペラ内部において流速がよどみがちになっている部分など,今後の形状改良につながる重要な知見を得ることができた.
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