研究概要 |
遠心型血液ポンプの設計段階における抗血栓性確保を最終的な応用目的とする本研究では,遠心ポンプの性能にもっとも強い影響を与えるインペラ内部の相対流速測定を直接行い,流動状態の改善によるポンプの高効率化,ならびに抗血栓性を考慮した形状の改善に関する検討を行った.昨年度実施した研究によって製作した回転像静止装置を用いてインペラ内部の二次元流速分布を行い,インペラ内部の異なる軸方向断面における流速分布の比較より,翼端近傍では隣接する流路からクリアランス部を超えて流入してくる流れが存在し,負圧面近傍の洗い流しに貢献していること,またインペラに流入する流体はインペラ下部(ハブ側)に偏っており,上部ではわずかに逆流していることが判明し,インペラ高さをより低くする必要性が明らかとなった.一方,従来の設計ではヴォリュートを持たないケーシングを採用しており,インペラから出口ポートへの流出は流路が出口を通過する瞬間にのみ限られていたが,新たにヴォリュートを持つケーシングを設計して流速測定を実施したところ,従来のタイプに比べて出口ポート通過時の流速変動が著しく軽減されていた.この効果によって,インペラに作用する半径方向流体力を軽減し,インペラの姿勢保持に必要な力が低下することが予想される.その代償としては,インペラ入り口付近での逆流が顕著になるなど,特に軸方向に不均一な流れ場になっていることが明らかとなった.また,このヴォリュートの採用によってポンプ自身の性能は改善されていた.
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