研究概要 |
本研究では,主に人工心臓として使用される遠心型血液ポンプのインペラ内流れを対象とし,粒子画像流速測定法(PIV)により、インペラと共に回転する座標系から非定常流速分布を計測し,これまでは準定常の仮定の下で行なわれることが多かったポンプ内部の低流速域の特定や最高せん断応力値の変動のような遠心型血液ポンプの血液適合性の指標となりうる項目の非定常下での評価を行い,現在行なっている血液ポンプ開発に活用することを目的とする.まず,我々が開発している人工心臓用ポンプはインペラ直径が40mmと超小型であるため,可視化用に2倍相似拡大モデルを新たに製作した.さらに,遠心ポンプの性能にもっとも強い影響を与えるインペラ内部の相対流速測定を直接行い,流動状態の改善によるポンプの高効率化,ならびに抗血栓性を考慮した形状の改善に関する検討を行った.また,製作した回転像静止装置を用いてインペラ内部の二次元流速分布を行い,インペラ内部の異なる軸方向断面における流速分布の比較より,翼端近傍では隣接する流路からクリアランス部を超えて流入してくる流れが存在し,負圧面近傍の洗い流しに貢献していること,またインペラに流入する流体はインペラ下部(ハブ側)に偏っており,上部ではわずかに逆流していることが判明し,インペラ高さをより低くする必要性が明らかとなった,一方,新たにヴォリュートを持つケーシングを設計して流速測定を実施したところ,従来のタイプに比べて出口ポート通過時の流速変動が著しく軽減されていた.この効果によって,インペラに作用する半径方向流体力を軽減し,インペラの姿勢保持に必要な力が低下することが予想される.その代償としては,インペラ入り口付近での逆流が顕著になるなど,特に軸方向に不均一な流れ場になっていることが明らかとなった.また,このヴォリュートの採用によってポンプ自身の性能は改善されていた.
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