研究概要 |
本研究の目的は、超高熱流束沸騰面近傍の気液微細挙動を測定するために静電容量法に基づく新たな測定法を開発し、限界熱流束がサブクール度の増加とともに急増する原因を解明することである。この目的のために、本年度に行った研究実績の概要を以下に記す。 1.測定に供する沸騰実験系を構築した。実験体系は伝熱面直径8mmの水平上向き面で、伝熱面上方に3次元方向に移動可能な微動ステージを取り付けた。この実験装置で、サブクール度約80Kまでの限界熱流束近傍での実験が可能であることを確認した。 2.パーソナルコンピュータとA-D変換ボード搭載のデータ収集装置から成るデータ処理系を作成した。これにより、プローブからの電圧信号を分解能16bit、最大周波数100KHzで取り込むことが可能となった。 3.上記1,2の実験系とデータ処理系の動作確認のため、直径50μmの被覆金属線をプローブとした触針法により伝熱面近傍のボイド率を測定し、超高熱流束の沸騰条件下でも伝熱面は乾燥することなく液で覆われていることを明らかにした。この事実から、限界熱流束は伝熱面上の液膜(マクロ液膜)が乾燥することで発生すること、限界熱流束機構の解明にはマクロ液膜厚さの定量的な測定が必須であることを確認した。 4.静電容量法に基づく測定系の開発をほぼ終了した。この測定法は、プローブと伝熱面間の静電容量の変化を測定して、非接触で伝熱面上の正味の液量を求めるものである。静電容量変化の検出には周波数変調回路を採用し、高検出感度、高応答速度を有する検波回路を組み込んだ。発振の中心周波数は、検出感度を上げるために10.7MHzと可能な限り高く設定した。プローブ径は0.9mmであるが、さらに細くできる見通しを得ている。このプローブを沸騰面上に設置して予備測定を行い、静電容量の変化を高感度で検知できることを確認した。
|