高熱流束沸騰面近傍の気液微細構造の解明を目指して、従来の触針プローブ法を大幅に改良した測定系を開発した。空間分解能を向上させ表面張力の影響を低減させるために先端直径5μm以下の触針プローブを作成するとともに、プローブからの出力パルスの幅と到来時刻を測定するパルス測定系を開発した。この測定系により、時間平均値だけではなくパルス幅スペクトルやパルス幅毎の頻度などの測定が可能となった。この測定系を用いて、サブクールプール沸騰で伝熱面を覆う合体泡が周期的に形成される高熱流束域で伝熱面近傍の気液挙動を測定した。その結果、合体泡パルスの頻度やスペクトルなどの解析を通して、マクロ液膜の初期厚さに対応すると考えられる領域を特定することができた。また、マクロ液膜厚さはサブクール度の増加とともに飽和沸騰での予測値に比べて厚くなる結果となり、これがサブクール沸騰で限界熱流束が増大する原因であると考えられる。 微小伝熱面や低熱容量伝熱面では一次気泡挙動がサブクール沸騰限界熱流束の発生と密接に関連する。本研究では、短寿命の微細一次気泡を測定するために、静電容量プローブを用いた測定系を開発した。この測定系を用いてサブクール度70Kまでの範囲で測定を行い、従来の高速ビデオなどを用いる方法では高精度な測定が困難であった、気泡のgrowing timeとwaiting timeを非常に高感度で特定できることを示した。また、growing timeはサブクール度にほぼ反比例して減少することや、Waiting timeは既存モデルの予測のようにサブクール度とともに単調な増加傾向は示さないことを明らかにした。
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