| 研究概要 |
生体組織やバイオ人工組織の凍結は・凍結保存や凍結手術と関連して、医療、農林、水産、畜産、食品などの広い分野で利用されると共に、凍結の利用対象と条件の拡大、技術としての信頼性の向上が望まれる。本研究課題では、組織の凍結に関わる基本現象の一つとして、凍結組織内の微細氷結晶の再結晶化の時系列ミクロ挙動を、実時間・三次元計測法の初めての適用により、実験的に調べ、その統計的特性を初めて詳細に明らかにする。さらに、実験的知見に基づいて、同現象をシュミレートするための数値解析ツールを構築し、当該プロセスの最適設計に資する知見を得る。
平成13年度には、急速冷却(冷却速度〜100℃/min,最低到達温度-50℃)後の生体組織(代表的な細胞膜透過型凍結保護物質であるジメチルスルホキシド2.0Mで前処理された新鮮な鶏の胸筋)の緩速加温(加温速度0.1℃/min,1.0℃/min)過程において、以下の点が明らかにされた。
1)共焦点レーザー走査顕微鏡と蛍光色素による実時間・三次元計測法の初めての適用により、微細な氷結晶や組織細胞の形態の時系列変化を画像計測することができた。
2)1)の画像データから氷結晶のサイズを定量化し、その頻度分布、平均値、標準偏差、氷結晶の個数や総量などの統計的特性の時系列変化を明らかにした。筋繊維内の氷結晶の数は加温過程で単調に減少する。温度上昇による再結晶化のために、頻度分布に関してはサイズの小さい氷結晶の頻度の減少と大きいサイズの氷結晶の頻度の増加により、サイズの平均値は増加するが、ある温度で極大値をとる。それ以上の温度では融解現象が支配的になるため平均値は減少する。氷結晶の総量は、再結晶化の初期の段階で熱平衡の場合の氷結晶量の値に漸近的に増加し、さらなる温度上昇に対してほぼ熱平衡の状態で単調減少する。
3)2)の特性に対する加温速度の影響に関しては、加温速度の遅い方が、温度上昇に対する氷結晶の数の減少、サイズの平均値の増加が著しく、その極大値も大きく、熱的非平衡性の緩和による氷結晶の総量の増加割合も大きく、より明確な再結晶化現象を示す。
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