研究概要 |
近年,環境分野への関心が高まっており,様々な排気ガスへの規制が厳しくなっている.排気ガス中には様々な有害物質が含まれているが,本研究では中でも窒素酸化物(NO_x)に着目している.NO_xは対流圏においては光化学スモッグの原因となり,光化学オキシダント生成に寄与するが,成層圏においてはオゾン(O_3)を破壊すると言われている.近年,航空機の高速化と飛行高度の増大,需要の増加傾向があり,今後もこの傾向が続くと考えられているのに加え,近年世界各国で開発の進んでいる次世代超音速機は成層圏レベルの高度を飛行することになり,これらの排気ガス中のNO_xがO_3に及ぼす影響が危惧される.O_3は温室効果ガスであることに加え,地球表面を有害な紫外線から防御している.航空機の排出したNO_xはO_3化学に寄与する.航空機の排出したNO_xの成層圏における挙動は数値シミュレーションによって主に行われてきたが,モデルの不確かさから結果も曖昧である.本研究は,実験的にこの系におけるNO_xとO_3の挙動を調べた.実験室において大型真空チャンバを使用することで成層圏レベルの安定した圧力状態を実現し,またO_3生成を可能とし,NO_xの光解離を誘起する光源として低圧水銀ランプを使用し成層圏環境を模擬し,その環境を模擬成層圏と定義した.計測はNO, NO_2-LIF法を使用することNO_xの濃度を測定することで一定濃度のNO_xが存在した場合の模擬成層圏におけるNO_xの挙動を測定した.O_3,NO, NO_2の光化学反応を含む反応系での挙動を計測した.模擬成層圏におけるそれらの挙動に対し,実験結果と実際の成層圏の光解離定数を使用した計算結果を検討した結果,NOxの濃度収束値や反応の時定数等に関して,定性的には同じ傾向が見られた.実験室において成層圏で起こりうるNO_x-O_3の反応を模擬できたと考える.
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