研究概要 |
二酸化炭素(CO_2)を冷媒とする冷凍サイクルでは,膨張弁における不可逆損失が大きく,膨張装置を用いることにより理論性能は通常のCO_2サイクルに比べて約70%向上する.本研究では圧縮機と膨張機を一体としたベーン形の流体要素に関して,その基本性能を解析すると共に,装置を試作して圧縮機,膨張機,およびサイクルの性能を検証するものである. 昨年度は圧縮/膨張一体形流体機械を組み込んだサイクルにおいてその理論性能について検討し,運転条件が設計点からずれた場合に発生するバイパス損失や予膨張損失について理論的に検討した.本年度は圧縮/膨張一体形流体機械の試作および試験を予定していたが,実際に一体形の機械を設計する際にはかなりの困難が予想されたため,まずはベーン形の膨張機を試作して,その性能・運転特性を検討するとともに,二酸化炭素サイクル特有の超臨界域から二相域への膨張過程の解明に力を入れることとした.その結果試作した二酸化炭素サイクル用膨張機においてその運転に成功し,超臨界域から二相域への膨張過程を測定することができた.試作膨張機の効率は60%の目標に対して43%であったが,損失のほとんどは内部漏れによるものであり,今後モデル試験を通して設計の最適化を図れば十分実用化レベルに達することを実証できた.また,膨張機の試作と平行して膨張過程の詳細な計算モデルも構築し,その膨張過程について解析的にも検討を行った.その結果小さな膨張比を持つベーン形膨張機であっても不足膨張の影響は小さく,入口ポートにおける流動抵抗による損失や伝熱による損失も膨張機の効率に及ぼす影響が小さいことが明らかとなった. 今後は膨張機の改良,圧縮/膨張一体形機械の設計・試作,今回開発した計算モデルを用いたサイクル性能の検討などを行う予定である.
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