研究概要 |
二酸化炭素を冷媒とした冷凍空調システムにおいて,圧縮機と膨張装置を一体としたベーン形の流体要素を用いた絞り損失回収技術の確立およびサイクル性能の向上を目的とし,主にベーン形膨張機の試作と性能評価を試みた.まず,圧縮/膨張機を組込んだ二酸化炭素サイクルの理論性能を検討し,膨張機の組込みによりサイクルの理論性能が大きく向上することや,放熱圧力の制御範囲および運転条件が設計点からずれた場合のバイパスおよび予膨張損失の度合いを明らかにした.超臨界二酸化炭素の膨張機過程が不明であることと膨張機の性能がサイクル性能に大きな影響を及ぼすことから,本研究ではまず膨張機単体を試作してその性能を測定するとともに,遷移臨界膨張過程の解析モデルを開発し,膨張機の性能予測および損失分析を行った.試作したベーン形膨張機を用い,2000rpmにおいて全効率0.43,動力約220Wを回収することに成功し,超臨界域から二相域への遷移臨界膨張過程の測定もなされた.各効率および損失分析の結果より,ロータ端面を通る漏れや供給ポートにおける圧力損失が性能低下の主要因であり,今後諸元の最適化およびシールデバイスの適用により,要求される全効率が十分達成可能であることが示された.今回試作した膨張機をサイクルに組み込んだ場合,サイクル性能としては24%の向上が見込まれる.一方,課題は多いものの高性能が期待できるシングルロータタイプの圧縮/膨張機の試作・試験を行ったが,ロータに作用するラジアル荷重に対して製作精度が不足しており,低回転数で回転したものの圧縮機側でほとんど圧縮がなされなかった.今後シングルロータタイプに関しては製作精度向上による運転の実現を目指すとともに,試作を終えたデュアルロータタイプを用いて圧縮/膨張機の運転,性能向上,およびサイクルに組み込んだ場合のサイクル特性などを明らかにし,圧縮/膨張機を組み込んだ二酸化炭素サイクルの実用化を目指していく.
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