研究概要 |
かって明確な着火抑制効果を示すことで広く使われたアルキル鉛の燃料ガソリンへの添加効果について,急速圧縮機と衝撃波管を用いて,その機構を明らかにしようとしている.その手法はまず,着火遅れを測定してその温度・圧力依存性を知ること.発光分光により化学種を同定すること.反応中のガスを全量サンプリングして,ガスクロマトグラフ,質量分析器で化学種を定量することである. これに続いて,温度・圧力条件を選んで,着火が得られるか得られないかの境界付近の圧縮自着火について,メタン(オクタン価:120)ならびにn-ブタン(オクタン価:94)を燃料にして,着火直前のチャージのガス組成を調べる.これまでに,これに近い手法で一酸化炭素COの生成・消滅の挙動を調べてきていて,着火の閾値となる組成臨界値を得ている.しかし,あとわずかのところはまだわからない.ホルムアルデヒドHCHOと一酸化炭素COの生成・消滅過程を詳細に検討し,そこの壁を越えんとしている.燃料をメタンとn-ブタンの混合ガスとし,その混合割合をいくつかに振り,空気を酸化剤とした混合気にホルムアルデヒドを着火制御添加剤として混ぜ,予混合圧縮着火運転して,その着火時期がどう変わるかを調べている.反応中のガスの全量サンプリング,成分定量を行ってホルムアルデヒドの着火制御添加剤としての顕著な効果を見いだした. 一方,平坦低温度バーナでは,燃料を広く選ぶことができないという制約はあるものの,各種の添加剤をDopeしたり,物理的な刺激を着火まえに相当する低温度炎に与えて,その効果を肉眼で見て確認している.窒素系の化合物についてすでにいくつかに実績があり,かなり予測が可能な段階にきている.これらの結果をもとに,着火前の全炎反応中のチャージにどのような刺激を与えれば,最終的な熱炎自着火に対して,促進効果,抑制効果を与え得るか,ということを,演繹的に探っている.
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