研究概要 |
本研究では,非定常燃料噴霧・噴流を着火させる筒内直接噴射式機関における着火制御を,燃料組成の最適設計によって実現することを目的とし,必要なデータベースの取得と着火モデルの立案を行う.本年度は,(1)純粋燃料と混合燃料との着火性の比較,および混合過程と燃料影響との関係の把握,(2)燃料と空気の混合過程と化学反応過程を同時に記述した着火モデルの作成,の二項目を主たる実施項目とした. 上記項目(1)に関して,昨年度実施のn-heptane, i-octane混合燃料に加えて,n-heptaneをベースとして,同じ飽和直鎖炭化水素であるn-tridecaneならびに,含酸素燃料であるethanolを混合した燃料の着火遅れならびに熱発生率の特性を実験的に評価した.その結果,n-tridecaneの混合は,基本的に着火遅れの温度依存性を変化させないが,少量の混合によって大幅に着火遅れが短縮されること,また,ethanolの混合による影響はi-octaneのそれと類似しているが,より少量の混合によって着火遅れが大幅に長くなるがわかった. 項目(2)に関しては,確率過程論混合モデルとSchreiberによる5段簡略反応モデルを組み合わせた着火モデルを構築し,主として実測の燃料-空気の混合速度の影響を再現することに重点を置いて,モデルの検討を行った.その結果,実測された燃料噴射圧力や噴孔径の影響をある程度再現でき,着火に至る化学種の変化の過程を予測することができた.ただし,モデルの予測精度を向上させるには,噴射条件と乱れ特性との関連づけ,ならびに化学反応モデル中の精度などについて検討を要することがわかった.
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