本年度は熱交換器の設計・製作、基礎データの取得、対応する系に関する数値解析コードの開発、全熱回収率、有効熱回収率および熱交換器外壁温度及ぼす主要パラメータの検討などを課題として研究を行った。 熱交換器本体は、厚さ2mmの耐熱ステンレスで製作された縦160mm、横160mm、高さ50mmの直方体空間と縦50mm、横160mmのダクト形流路を一体化したユニットを隔壁と多孔性媒体で多層化した構造である。低温部-高温部、低温部-高温部-排熱回収部、低温部I-高温部I-低温部II-高温部II、低温部I-高温部I-低温部II-高温部I-排熱回収部の2層から5層の構成で実験を行った。なお、隔壁は厚さ2mmの耐熱ステンレス製で、フィン無しおよびフィン付き(厚さ1mm、高さ54mm、長さ155mm、片面4枚)の2種類を用意し、表面には耐熱黒体塗料を塗布した。また、多孔性媒体としては空隙率約93%、平均孔径0.6mm、比表面積3700m2/m3のニッケル・クロム系発泡金属ならびに空隙率約98%、素線径0.25mm、比表面積375m2/m3のSUS304製ワイヤーメッシュデミスターを使用した。 実験は、2層から5層の熱交換器構成に関して、高温部の作動ガス入口温度が400〜600℃(673〜873K)、発泡金属の光学的厚さが7.8、ワイヤーメッシュデミスターの物理的厚さが55mm、フィン無しおよびフィン付き隔壁、低温部、高温部および排熱回収部の作動ガス平均流速が0.15、0.23m/sの条件で行った。その結果、発泡金属で高温部を遮蔽した排熱回収部を設けることにより、熱交換器外壁を低温に保つことが可能であるとともに良好な熱回収率が得られること、5層の熱交換器構成により高温部の作動ガス入口温度が600℃の場合でも約40%の全熱回収率が得られることなどを明らかにした。また、放射熱交換の1次元平板系に基づく連成数値解析により、本熱交換器システムの温度場および熱回収率が実用的な精度で予測できることを示した。
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