研究概要 |
本年度は,水および吸収式冷凍機で実際に使用される臭化リチウム水溶液を用いて,鉛直平板面および鉛直円管内面に液膜を形成し,人工的な周期じょう乱を与えてその表面に波を発生させる実験を行い,表面波の運動特性を調べた.臭化リチウム水溶液は,動粘性係数が水の約2倍で,密度が水の約1.6倍であるため,同じレイノルズ数の条件下では,表面波のじょう乱周波数が同じ場合でも速度および波長が水より大きくなる.また,昨年度までに完成させた数値計算プログラムによる計算においても実験と一致する結果が得られた.本研究では,特に空気冷却式吸収器の高性能化を目的としているため管内面液膜流に最適な表面波を形成することが主目的となるが、管内面液膜流表面に形成される波は,曲率の影響と管周方向の三次元的な変化の影響で,平板面上の波より波速が大きくなるという結果が得られた.この点についてはさらに詳細な検討が必要である.数値計算プログラムは,さらに改良が加えられ,臭化リチウムによる水蒸気吸収をシミュレートするために,気液界面において熱移動と物質移動の条件をリンクさせ,界面濃度変化および界面温度変化の計算が可能となった.これによって,表面波が発生した場合,大波の前方の谷部で液膜が薄くなることで,気液界面温度が低くなり,それに起因して臭化リチウム濃度も低くなるため液膜内での水の移動速度が大きくなり,水蒸気吸収が促進されること,大波の頂部では表面温度が高く,濃度勾配も小さくなるため水蒸気吸収量が小さいことを明らかにした.
|